元気でいること
何をもって元気でいるって言えるんでしょうね。
最近、土日になると身体が動きません。
ぐったり という表現がぴったり。
それほどまでに何もせずに1日が終わります。
うつらうつらと浅い夢を見て、うなされているのか
惰眠を貪っているのか分からない状態です。
ここ2,3週間は比較的、仕事が落ち着いています。
その分、精神的に消耗しているのかもしれません。
何でもないように振る舞い過ぎているのかもしれません。
たぶん、この半年ほど自分のために時間を使う ということが思いの外
うまくできてなかったのかもしれないなぁ。
なんてことをふと思ったり。
少し長めの研修があったり、店舗に付きっきりだったり、事務所と店舗の半々の
勤務だったりで変化についていくのがやっとだったんだと思います。
来週から自分の好きな映画館で観たいと思ってた旧作映画の上映が
どかどか始まるので、それまでには休日も元気!って状態になりたいです。。。
(切実)
孤独と不安のレッスン
今週のお題「プレゼントしたい本」
久しぶりにブログを開いて記事を投稿しようと思ったとき、
ビビビときてしまいました。
お題スロットの「プレゼントしたい本」
うおぉ!!
書ける!!!
書けるぞ!!!!
というわけで書きます。
私にとっての「プレゼントしたい本」は、
劇作家 鴻上尚史さんの『孤独と不安のレッスン』です。
誰かに というよりも、過去の自分にプレゼントしたい1冊です。
この本は1つの問いから始まります。
「どうして一人ではいけないんだろう?」
高校時代、私は端的にいうとクラスで浮いてました。
もっと突っ込むと高校時代に限らず、小学校時代も中学校時代もそうだったかも
しれません。今もそうなのかもしれません。
ですが、私のなかでは高校時代が一番孤独だった気がします。
私は、自分の殻に閉じこもることで高校時代をとりあえず乗り切りました。
とりあえず高校に通い、勉強に没頭することで孤独をやり過ごし卒業しました。
だけど、それで良かったのかな と今になって思うことがあります。
過去の積み重ねが今で、今の積み重ねが未来であるというのならば、
その高校時代も今の自分を構成する1つの大きな要素だと私は思っています。
そう思っているので「あの頃の自分はだめだった」のひと言で終わらせたくないの
です。
でも、もし自分がまた同じ道を歩もうとしているのなら。
自分にとって大事な誰かが同じ道を歩もうとしているのなら。
今の自分だからできること、かける言葉があるんじゃないかって思うんです。
そう思いながら自分ができること、かける言葉を探しながらも、
なかなか見つけられないでいるのが今の私です。
この本を最初に読んだのは大学3年生の頃でした。
就活を控え、漠然とした不安と希望の中でゆらゆらと漂っている時期でした。
当時はよく分からないまま、ただなんとなく読んで本棚にしまっていました。
1年前に自分のキャリアを考える機会があった時、再度この本と向き合いました。
この時になってようやく、今までの自分は「どう生きていきたいか」ではなく、
「人からどう思われたいか」に縛られて生きてきたのだということに気が付きました。
それはこの本で書かれているところの「後ろ向きの不安」に捕らわれているということ
なんだと思います。
高校時代の私もそうです。
どうやったら「友達がいなくてクラスから浮いてる自分」から離れられるのか。
そればかり考えていました。
どうやって「クラスメイトと関わっていこうか」とは考えていませんでした。
もし、あの時の自分が1ミリでもそう考えていたら、何か得られるものがあったかも
しれません。そのチャンスを逃してしまったのはもったいないな と思います。
だから、今はチャンスを逃さないように「前向きの不安」と一緒に生きていけるように
なろうと思ったのが1年前の話です。
チキンなので、今も後ろ向きの不安に捕まってしまったりしているのですが、
きっと前よりも回数は減っていると思います。
人と関わることを諦めないでいよう と思いながら毎日頑張れていると思います。
そう思っているからこそ、高校時代の自分にこの本をプレゼントしたいな と思います。
「どうして一人じゃいけないんだろう?」
あの頃の自分にそうやって問いかけてみたいな って。
たぶん、心を開いてくれない気がしますが(笑)
そういうわけで私のプレゼントしたい本の話でした。
ウミガメのスープ
こんばんは。
お久しぶりです。
気がついたらまた1ヶ月ほど経っていました。
最近、多いですねこのパターン。
そんなわけで。
本日は1年前にとあるサイトに投稿したお話を投下しようと思います!
久しぶりに読み返したんですが、何を思って書いたかは謎です。
自分もこんな話書くんだなあ と少し驚いてます。
今日は一気に秋の気配に包まれた1日でした。
もう夏じゃないんですね。しみじみ。
前置きがすっかり長くなりましたが、それではお話スタートです。
↓
「ウミガメのスープ」
作 高幡 あや
男がそのレストランに立ち寄ったのは偶然だった。
その晩はひどい嵐で、どの店も早々と閉めてしまっていた。
暗い街の中を歩いていると、ぽつんとした明かりが見えた。
近づいてみるとそれは、こじんまりしたレストランだった。
ドアを開けると、カランカランと、ベルの軽やかな音が響いた。
「いらっしゃいませ。」
耳もとで声がしたので男は驚いた。ドアのすぐ側にウェイターが控えていたのだ。
ウェイターはこれといって存在感がなく、まるで影のようだった。
「ご注文は。」
そう話しかけられて男は、自分がテーブルに案内され、
目の前にメニューが広げられていることに気付いた。
彼は何を食べたいのか、どれくらい空腹なのかもあやふやだった。
しかし、気がつくと口がひとりでに開き、言葉を発していた。
「…ウミガメのスープを。」
「かしこまりました。」
ウェイターは軽くお辞儀をし、吸い込まれるように店の奥へと消えていった。
男以外に客はなく、店内は古ぼけてはいたが、とても手入れが行き届いていた。
暖炉の上には飾り物のお皿が並べられているが埃を被ったものは一つもなく、
どのテーブルにも小さい花瓶が置かれ、花が丁寧に活けられていた。
彼は少しぬるくなった水を流し込みながら窓の外を眺め、料理が運ばれてくるのを待った。
注文をしてからしばらく経ったが、料理が運ばれてくる気配は一向になかった。
それどころか、料理を作る音もしなかった。
ウェイターに文句を言おうと立ち上がった時、男はあることに気が付いた。
ドアがない。
店内に入る時に使ったはずのドアがどこにもなかった。
ドアがあった痕跡すらも残っていなかった。
店内にあったはずの厨房に続くドアも、お手洗いも、ドアというドアが一切消えていた。
ウェイターは、と思って必死に探したが人の気配すら残っていない。
男は四角い空間に閉じ込められたのだ。
「悪い夢を見ているのだ。」
そうだ。悪い夢を見ているのだから、きっと醒めるはずだ。
男は自分にそう言い聞かせながら自分を落ち着かせようとしたその時、
ぱさりと音がして彼の足元に何かが落ちた。
それは、見覚えのある字で丁寧に書かれたレシピノートだった。
開かれたページの料理は「ウミガメのスープ」。
ノートを拾い上げ、彼はレシピを読んだ。
かつて一緒に暮らしていた女がよく作ってくれたメニューだった。
…彼女は生きている?
そう思った瞬間、男は急に眩暈がするのを感じた。
そんなはずはない。あの女は、彼女はもういないはずだ。
あの晩、酒に酔った勢いで突き飛ばした時。
彼女は強かに頭を打ち付けてピクリとも動かなかった。
それに。俺は彼女に関するものを全て処分した。
服もアクセサリーも本も、手紙も、何もかも。あのレシピノートだって。
それなのになぜ。
突然、男の視界がぐにゃりと揺れた。
「お客様、お客様。」
耳元でささやくような声が聞こえ、男はビクッと身体を震わせた。
ウェイターがぴったりと張り付くように立っていた。
「大変お待たせいたしました。ウミガメのスープでございます。」
ウェイターは静かに料理を置き、去って行った。
男は辺りを見回した。
店内は四角い閉じられた空間ではなく、すっかり元に戻っている。
男は狐に化かされたように呆然としていたが、正面に置かれたスープに目をやった。
かつて、彼女がよく作ってくれたスープだった。
男は震える手でスプーンを持ち、ゆっくりと一口啜った。
紛れもなく、彼女のスープだった。10年の歳月を経てもなお、変わらぬ味だった。
ひと口、またひと口と彼はスープを口に運んだ。
女は、厨房からホールの様子を窺っていた。
男の風貌はすっかり変わってしまっていたが、それでも面影は残っていた。
お金を払い、そそくさと出ていく男の背中を、厨房の陰から彼女は見送った。
男が店を出ると、嵐はすっかりおさまっていた。
「さあ、ウミガメのスープよ。」
鼻歌交じりにそう言いながら、彼女が食事の用意をしている光景が頭から離れない。
男はしばらく立ち止まっていたが、微かに首を横に振った。
全てを飲み込むような夜の闇に、男の姿が吸い込まれて消えていった。