シャッターチャンスを探して

探しているものはきっと、日常の中に。

手帳ジプシー

それどこ大賞「買い物」
それどこ大賞「買い物」バナー

 

「これは良いものを発見してしまった…」

女は自身のパソコンを前にして、一人にやにやしていた。

どうみても怪しい。

家族に現場を見られ、あらぬ疑いをかけられたとしても言い訳できないレベルで

にやにやしている。

 

彼女は手帳ジプシーである。

何年にもわたり、秋の気配が漂い始め手帳コーナーが作られるようになると

1時間近くは入り浸り、見本の手帳をパラパラとめくりあげた挙句、結局どの手帳も

買わずにその場をあとにする という暇人の極みともいえる所業を繰り返している。

そして毎年、「これだったら1年通して使い続けられるかもしれない」と1冊の手帳に

重すぎる期待をかけ、最初こそ張り切って使うもののすぐに息切れをし「来年こそは」

と未練がましく一人呟くのである。

 

そんな彼女は先日、凝りもせず手帳コーナーに入り浸り1冊の手帳を購入した。

その手帳がこちら。

store.shopping.yahoo.co.jp

 

そして帰宅して、意気揚々と自身のブログに「手帳選び」というタイトルでブログ記事

を投稿し、ひとり満足感に浸っているのであった。

 

しかし、何年にもわたり手帳ジプシーをしているだけのことはある。

彼女は「この手帳を買いました。かくかくしかじか」などと投稿したあとも、手帳に

関する記述のあるブログを探しては読み、面白そうな手帳があればネット購入の

ページに飛び、隅から隅まで読むのであった。

 

例年であれば、こうして買うわけでもない手帳のレビューを見ながらひとりで

「これは色合いが良いけれども、日曜はじまりなのが許せない」などと呟き、

日々のできごとに忙殺され、気がついたら手帳コーナーが縮小される時期に

なっているのであった。そう、例年であれば。

 

ところが今年は違った。

何の気なしに覗いたページに彼女が長年、「バーチカル手帳でこうだったらとても

良いのに」と思う要素がこれでもかと詰め込まれた手帳が載っていたのだ。

www.hightide-online.jp

 

この手帳の1番最高なところは「時間軸がない」ことである。

ざっくりと朝・昼・晩で3等分される1日の欄。

これは本当に良い。

彼女は大変ずぼらな性格なので、7時とか10時とか時間軸にきっちり合わせて書くのが

大変、苦手である。さらに付け加えると、記入できる時間帯を手帳に決められている

感じが何となく嫌なのである。端的にいうと、細かいスペースにきちんときれい

何かを書くという「女子力」と世間が呼んでるかもしれないそういった要素が欠落して

いるのである。

 

そして疎かにされることなく、平等に割り振られている土日。

(縦書きのバーチカルタイプの手帳で、土日だけ記入欄が少なく割り振られている

手帳をたまにみるのだが、あれは一体なんなんだろう。長年の謎。なぜ、土日が

そんなにも軽んじられているのか。別に土日に予定がぎっしり詰まってるわけじゃ

ないけれど。そしてこの()内に記述している一連の文章が必要かどうかとおそらく

不要で、彼女の一個人の見解であるのは記述するまでもない)

 

シンプルで読みやすいフォントと色合い、月曜はじまりであること。

表紙の鳥がどことなくノスタルジックかつほのぼのとしていることも彼女を悩殺する

要素の1つであった。

 

こうして彼女は1冊の手帳をめぐる予定外の悩みに直面するのであった。

買うか買わないか。

 

彼女には1つポリシーがあった。

「買い物は極力、実物を見てからする」

手帳のような1年単位で使い、日頃から目にするものに関しては特に。

(その割に毎年手帳ジプシーになってるけどね!)

 

手帳コーナーに行ってみたが、なぜか見かけない。

実物を見たら多少は気がおさまるのに、実物を見れないので余計に気になる。

 

解体、いや買いたい。

 

しかし彼女は先日、「手帳を買いました」という記事を書いたばかりなのである。

もう1冊気になってしょうがないので買いました などと書きたくない。

なんだか節操がない ような気がするのだ。

そこに追い打ちをかけるかのように、職場のエライ方から一言。

「今年も手帳買う時期になったなぁ。俺、いつも同じの買うんだけど、このサイズが

なかなか店になくて困るのよ。あははは」

 

そう、彼女は自身が手帳ジプシーであることを改めて感じさせられたのである。

一体、いつまで手帳ジプシーを続けるつもりなのか。

もし、この1冊を買ってそれがきっかけで手帳ジプシーを脱却できるなら最高では

あるまいか。

そんな考えが一筋の光のように舞い降りてきた。

こうして彼女は帰宅する途中の電車で、スマートフォンから手帳の購入ページに飛び、

[購入する]ボタンをそっと押したのであった。

 

 

 

ちなみに書くまでもないかもしれないが、彼女 とは私自身のことである。